日本では今年2019年の干支は亥(い)です。亥年は「いどし」とか「いのししどし」とか呼ばれますね。「猪年」とも書かれます。
ところが香港の知人から2月5日に届いたカードにはイノシシではなくブタの絵がありました。中国では今年はブタ年なのですね。
日本では当たり前のことが、実は世界とは微妙に違っているというのはよくあることです。今回は干支について調べてみました。
- 中国は旧正月がとても大切な祝祭日
- 干支は本当は60年サイクルだった?
- 十干には五行からくる意味があった
- 日本に干支が入ってきたのは5世紀ごろ
- 「ひのえうま」って何?
- 亥年の種類は5つある!今年は己亥で60年サイクルの36番目
- イノシシとブタ?なぜ日本と中国は亥年の動物が違うの?
- 国によって十二支の動物が違うところがある
- まとめ
中国は旧正月がとても大切な祝祭日
今年2019年の中国は2月5日から旧正月(Chinese New Year)が始まりました。これは春節とも呼ばれています。2月7日までの3日間が旧正月で、ここを2月10日まで大型連休にしてお祝いをしていました。
そして今年はブタ年(Year of the Pig)です。知人のカードにはかわいいブタの絵がありました。
旧正月は香港もそうですが、東南アジアの国々でもお祝いされます(国によって少し日にちがずれるところがあるようです)。旧正月とは旧暦のお正月のことで、日本の1月1日が元旦ならば、今年の2月5日が旧暦の元日にあたります。
香港に住んでいた時に1月1日の1日だけがNew Year's Dayとしてお休みで、その前後の日は銀行が通常営業で開いていた記憶があります。そして旧正月に長いお休みを取る人が多く、この期間に中華圏の人々が大移動します。香港の知人のカードはこの「旧正月」に送られてきたわけですね。
過去に中国からの観光客が日本で爆買いしていたのも、この旧正月休みを利用してのことでした。さて、今年はどうだったのでしょうか?
また、この旧正月になると株式相場のトレードに入る人口が減るので、注意を必要とする期間だと言っているトレーダーがいました。今年の場合は日経平均株価はじりじりと数日横ばいで2月8日金曜日に急落、翌週12日火曜日は急騰していましたね。
干支は本当は60年サイクルだった?
紀元前の中国にはすでに60年サイクルの干支がありました。少々複雑ですが興味深いのでご説明します。
まず万物は火・水・木・金(ゴンとよみます)・土の5種類の元素からなるという五行思想があり、ここにもう一つの思想、陰陽思想が合わさって陰陽五行思想になります。
1つ目の五行思想は5種類の元素は互いに影響をおよぼしあって自然や人、社会が変化していくという考えで、2つ目の陰陽思想は陰の気と陽の気の2つの相反する気が相互作用することで万物が作り出されるという考えです。
陰陽五行思想にはもうひとつ三才思想も含まれており、これは天・地の気が交わり人の気を生じるという思想です。天は太陽・父の象徴で十干であり、地は大地・母の象徴で十二支であり、人は人間の象徴で九星であり、この3つで天地自然の摂理を読み解こうとするものです。
十干は古代中国で使われた10日で一旬するサイクルからきていて、10の数詞で表されます。
十干:甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸
十二支はご存知のとおり12種類の動物からなるもので1年ごとに順番に進んでいきます。なぜ動物であるかの理由ははっきりとはわかっていないですが、人々が暦を覚えやすいようにあてたのではないかという説があります。
十二支:子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥
干支は、もとは古代中国でこの十干と十二支を組み合わせた60種類のサイクルで作られたもので、60日、60か月、60年を表していました。普段私たちが日常で干支と呼ぶ十二支とは少し違いますね。そして干支はその後に暦や時刻、方角を表すようになっていきます。
十干と十二支では120種類の組み合わせができるのではないか?と思うのが普通ですよね。なぜ60種類なのでしょうか?
十干には五行からくる意味があった
実は十干は2種類にわかれます。
「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」の読み方は、「こう・おつ・へい・てい・ぼ・き・こう・しん・じん・き」のほかに、「きのえ・きのと・ひのえ・ひのと・つちのえ・つちのと・かのえ・かのと・みずのえ・みずのと」と読むのですが、たとえば「きのえ」は「木の兄」からきています。そして「きのと」は「木の弟」からきています。
この言葉のそれぞれの最後の「え」が「兄」で陽を表し、「と」が「弟」で陰を表し、陰陽2種類にわかれるのです。そして「えと」の名前の由来はここからきているんだそうです(下の表1参照)。
一方、十二支にもそれぞれ陰陽があり、「子・丑・寅・・・」と順番に数えたときの奇数番目が陽、偶数番目が陰となり、十干と十二支の陽同士、陰同士で組み合わさっていくために、120種類ではなく60種類になるのです(下の表2参照)。
つまり、甲子はあるけれど、乙子はありません。そして乙丑はありますが、甲丑はありません。この60種類をもちいた60年サイクルの干支を1年ごとに進めていくようになります。
参考:平成三十一年運勢歴 高島易断総本部歴書館
陰陽五行思想 - Wikipedia 五行思想 - Wikipedia (参考資料より表1,2を作成)
日本に干支が入ってきたのは5世紀ごろ
60年サイクルだと、自分が生まれた年と同じ干支は1周回って60年後にやってくるんです。すごい長期ですね。還暦で60歳を祝うのもここからきているんだそうです。
もしかしたら将来には、医学の進歩で2回目の還暦の120歳まで生きられる人が増えているかもしれませんね。120歳は大還暦というんだそうです。
余談ですが上の表2の1番目の「甲子」になじみのあるものがありますよね? 阪神甲子園球場の甲子の名前はここからきているそうですよ。
1924年の甲子の年にこの球場のもとになる大運動場を阪神電気鉄道が作り、その土地一帯を甲子園と名付けたんだそうです。
「ひのえうま」って何?
ところで、私には「丙午(ひのえうま)」年生まれの友人がいます。この年生まれの女性は気性が激しいという古い迷信があり、出生率が下がると言われます。ですが友人はとてもおだやかでやさしく、夫婦円満な家庭を築いています。
一方、別の年生まれの女性で気性の激しい人は何人も知っています(笑)。
なぜ丙午にはこんな迷信があるのでしょうか?
丙午は「表1の丙」を見ると「火の兄」を意味しています。江戸時代には大きな火災がたびたび起こっていましたが、丙午の年には火災が多いという迷信がありました。
そしてちょうどその時代に、恋人に会いたい一心で放火事件を起こしてしまった、かわいそうな「八百屋お七」が丙午の年の生まれだったのではないかという説とからんで、そのような迷信になったようです。
八百屋の娘のお七は浄瑠璃や歌舞伎などでとても有名で、現代でいうと高校生ぐらいですが、本当のところは実在の人物かどうかは不明のようです。
前回の丙午の1966年の出生数は136.1万人でした。これは当時激落ちの出生数でしたが、2016年の出生数は97.7万人で内閣府が統計開始した1899年以来、初めて100万人を割りました。2017年はさらに減っています。
次の丙午の年は2026年ですが、この年の出生数を想像するとちょっと寒くなりますね。ですがその年は丙午生まれの友人が還暦を迎える年です。一緒に楽しくお祝いできればいいなと思います。
参考:出生数・出生率の推移 - 少子化対策 - 内閣府 八百屋お七 - Wikipedia
亥年の種類は5つある!今年は己亥で60年サイクルの36番目
もう一度表2を見てみましょう。亥年は乙亥、丁亥、己亥、辛亥、癸亥と5種類あることがわかります。そして今年の亥年は己亥(つちのとい)にあたります。
「つちのと」は表1で土を表しています。そして「亥」は水を表します。十二支も五行で分別されていて、寅・卯・辰が「木」、巳・午・未が「火」、申・酉・戌が「金」、亥・子・丑が「水」を表します(土に該当する十二支はありません)。
今年は「土」と「水」の年なのですね。どういう意味の年になるかは他記事を参照いただくとして、少し「易」を知っている知人は「今年は、来年の準備のための年」と言っていました。
イノシシとブタ?なぜ日本と中国は亥年の動物が違うの?
香港の知人のくれたカードの話に戻りますが、亥年の「亥」は「猪」のことです。
先述のとおり十二支は人々が暦を覚えやすくするために、身近な動物にあてはめたのではないかといわれていますが、今年の「猪」という字は日本では「イノシシ」のことで、中国では「ブタ」のことになります。
実は古代の中国ではすでにイノシシを家畜化したブタがいて、それが干支に入ったのですが、のちに十二支が日本に入ってきた時代には、日本には家畜化したブタがいなかったのでイノシシになったようです。日本には野山にイノシシがたくさんいたので、家畜化の習慣がなかったのですね。
参考:干支・十二支・十干 『違いや歴史』【亥は日本では猪、中国では豚】
国によって十二支の動物が違うところがある
十二支を使う国はアジアだけではないようで、ロシアやアラビア、インドでも使われています。国によっては十二支の動物が違っているところがあるようです。
牛→水牛・・・ベトナム
龍→ワニ・・・アラビア
羊→ヤギ・・・タイ・ベトナム・ロシア
ブタ→イノシシ・・・日本
トラ→ヒョウ・・・モンゴル
両方の動物を使う国もあるようですが、なぜ中国とは違う動物を使うようになったのかを日本のイノシシ以外でも調べるとまた面白そうですね。
まとめ
干支が実は60年サイクルで、自分が還暦を迎える時が本当の自分の干支になり、1周してきたんだという事実になるんですね。そして2周目を迎えるときはその人は120歳になるということで、そんな人はごくわずかということになります。
宇宙から見たら人間の一生はとても短いあっという間のもの。ネガティブよりは楽しい時間を増やし、有意義に過ごしたいものです。
また、同じ亥年でも5種類あり、それぞれの亥年の性質も十干が絡むので少しづつ違うようです。今年の亥年がどんな年になるのか、それは60年前との比較になるわけですね。そして今年が終わってみないと今年がどうだったのかは語れません。
いい年になりますように。いい人生になりますように。少しづつでも自分でできることをしていきたいです。
今回はここまでの記事となりますが、干支や陰陽五行思想は知れば知るほど奥が深いんだなという印象を受けました。
(記事がお役に立てれば幸いです。)